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 衆議院選挙を終えたが、減税を唱えた政党が躍進している。国民民主党は所得税における基礎控除拡大、揮発油税におけるトリガー条項の凍結解除、れいわ新選組は消費税ゼロを主張している。一方で、石破新首相は財源確保のため法人税や金融所得税の見直しを総裁選で主張していたが、こちらの論議は進んでいない。

 政策を推進するにあっては、政策論議が求められるが、少なくとも財源論をしっかりと固めないと次世代に大きなつけを遺す。既に国家予算の4分の1は国債により賄われているが、補正予算では国債の償還費と利払いがほぼ同額である。本書は、これらの問題に警鐘を鳴らしてきた著者が、失明の危機、重病を抱えながら長年の研究成果をま...
 柳原白蓮のご長女「宮崎蕗」が記した「白蓮 娘が語る母 燁子」を拝読する機会に恵まれた。

 本書は、蕗様の母白蓮を中心とする宮崎家にまつわる貴重な歴史的記憶を福岡県飯塚の郷土研究者「宮嶋玲子」がとりまとめたものである。白蓮はこの飯塚で炭鉱王「伊藤伝右衛門」と妻として若き日を過ごしている。

 読後、先ず感じたことは、白蓮の生涯が旧皇族の身分を越えた若き革命家との恋物語としてしか語られず、宮崎家の一員として、戦後、日中友好と不戦のための多大なる功績が、あまりにも評価されてこなかったということである。

 本書の中には、秘話として白連の義父宮崎滔天が蒋介石に和平工作に訪中しようとし、その出航直前に憲兵に捕ら...
 本書(『都市格について 大阪を考える』)は大阪ガスの会長であり大阪商工会議所の会頭を勤めた大西正文が、大阪が衰退し都市としての誇りを失いかけていた時代(1995年)に発刊した名著である。

 大西は人に人格があるように会社には社格、都市には都市格が必要と伝えているが、この都市格というフレーズは戦前の大阪府知事中川望がはじめて使ったものらしい。その後、経済学者で滋賀大学学長を務めた宮本憲一氏や関西文化に詳しい木津川計氏なども同様のスタンスで、都市格の必要性を述べている。

 大西は、先ず、紀元前に経済的に栄えた通商国「カルタゴ」がローマとの戦いに敗れ滅亡しているが、この原因に「富の蓄積だけに血道をあげ...
Amazon紹介文
この社会はどのようにして、現在のようなかたちになったのか?
敗戦、ヤミ市、復興、高度成長、「一億総中流」、バブル景気、日本経済の再編成、アンダークラスの出現……
「格差」から見えてくる戦後日本のすがたとは――
根拠なき格差論議に終止符を打った名著『「格差」の戦後史』を、10年の時を経て、新データも加えながら大幅に増補改訂。
日本社会を論じるならこの一冊から。

著者 橋本 健二 
 1959年生まれ。早稲田大学人間科学学術院教授(社会学)。データを駆使して日本社会の階級構造を浮き彫りにする。『はじまりの戦後日本』『新・日本の階級社会』『アンダークラス』など。

本書の紹介
 著者は私よ...
「国鉄」石井幸孝 -「日本最大の企業」の栄光と崩壊(中公新書)

 JR九州が運航する関釜フェリーの船首部分の浸水を把握しながら事実を隠蔽し、3か月以上運航を続けていたことが伝えられた。現在、値上げ申請中の運賃問題についても、財務基盤の強化という観点で一定の理解を示しても、総括原価の算定方法に関して研究者から様々な問題が指摘されている。このようななか、JR九州の経営の中枢を担った石井幸孝の著書を紹介したい。
  
(1) はじめに
 国鉄「改革」に関する文献には少なからず目を通してきた。「改革派」といわれたJR東海の葛西敬之の「未完の国鉄改革」や労働側からの「告発」ともいえる文献など...
Amazonの紹介文から
 アレルギー専門医による診療50年の余録。新聞や雑誌への連載や投稿を通し家庭や学校でのアレルギー対処の是非を伝える。小児慢性疾患の治療と管理に関して発信を続けている。
 1972年神戸大学医学部卒業。国立療養所や県の保健環境部などを全国各地で歴任。1997年より眞田医院を開業、院長。閉院後、丹波アレルギークリニックを開設、現・丹波アレルギー研究所所長。小児慢性疾患の治療と管理に関して発信を続けている。
出版社 ‏ : ‎ 三省堂書店/創英社
発売日 ‏ : ‎ 2024/6/24
1320円 

 著者の眞田幸昭先生は小児科医として兵庫、長野、秋田など日本各地で50年以上にわたって...